中学入試頻出作家・瀬尾まいこの最新作「夏の体温」は、三つの友情物語

楽しみにしていた瀬尾まいこさんの最新作『夏の体温』を読みました。

瀬尾まいこさんは、2019年本屋大賞受賞作の『そして、バトンは渡された (文春文庫)』の著者です。永野芽郁さん主演で映画化もされて話題になりましたね。中学受験の国語でも、『あと少し、もう少し (新潮文庫)』が多くの学校で出題され、頻出作家として注目されています。

『夏の体温』は、2022年3月17日に出版された瀬尾まいこさんの最新作になります。
出版されてまもなく図書館で予約をしたのですが、予約人数がとても多かったので先日やっと順番が回ってきて、このゴールデンウィークに読むことができました。

三つの優しい友情物語「夏の体温」

表題作の「夏の体温」、女子大学生が主人公の「魅惑の極悪人ファイル」、中学校の教科書にも掲載された「花曇りの向こう」の三つの物語が収録されています。ひとつひとつは短くて読みやすかったです。

それぞれの物語の主人公は、小学生、中学生、大学生と異なる年齢ですが、共通するテーマは「友情」。三編ともに、瀬尾まいこさんの作品らしい温かくて心がほっこりする、読後感がとても爽やかな話でした。

瀬尾まいこさんは、「あと少し、もう少し」などの作品が中学受験でも出題されることが多い作家さんですが、『夏の体温』の三編のうち中学入試に出題されそうなのは、小学生が主人公ということもあり、表題作の「夏の体温」かなと思いました。

明るくて面白い壮太とあっという間に仲良くなる瑛介ですが、子どもながらにも言わない方がいいのかなと、気を遣ってある言葉を飲み込むシーンが印象的でした。

個人的には「魅惑の極悪人ファイル」が面白かったです。

主人公の早智のちょっとズレているところや倉橋との噛み合わない会話でくすっと笑えます。他人からどう見られていても自分がその人をどう思うか、が大事なんだなと改めて感じる作品でした。

「花曇りの向こう」は中学生の話ですが、子どものころに友達になるキッカケって些細なことのようで、勇気がいることだったりしたなと思い出して懐かしい気持ちになりました。

驚くような展開やドラマチックな事件が起きるわけではないですが、難しい言葉もなく読みやすいので、入試の頻出作家という視点でなくとも小中学生の読書や、少しほっこりと優しい気持ちになりたいときなどの大人の読書におすすめです。

「夏の体温」

表題作の「夏の体温」は、小児病棟が舞台。

一ヶ月ほど入院している小学校三年生の瑛介は、退屈な毎日に途方に暮れていた。世の中が夏休みに入ると、低身長の検査入院でやって来る子供の患者が増えるが、彼らはほんの二泊三日の検査入院で帰っていってしまう。

しかも入院してくるのは幼稚園児がほとんどで、瑛介とは話が合わない。

そんな時、同じ年の壮太が低身長検査のため入院してきた。壮太は遊びを考える天才で、瑛介は壮太とすぐに仲良くなるが、二人で遊べる時間はたった二泊三日しかなく、楽しい時間はあっという間に過ぎていってしまう……。

「魅惑の極悪人ファイル」

文学賞を受賞して大学生ながらも作家となった大原早智は、自分の容姿に自信がないが、「私ブスなんで」と開き直ってしまえば、人前でおどおどする必要はない。

深い付き合いの人はいないが、平穏な学生生活を送れるくらいの友人はいる、と思っていた。

あるとき、編集者から早智の書く物語には悪い人がいないと指摘されて、悪人を書くために「ストブラ」とあだ名される同じ大学の倉橋ゆずるに取材をすることにした。

腹黒いからストマックブラックの略で「ストブラ」と呼ばれてしまうほど、性格が悪いと噂される倉橋。

だが、取材に協力してくれた倉橋と話しをしたり、行動を共にしたりすると、倉橋にはどす黒い闇のようなものは感じられなかった。

早智と倉橋は、ちぐはぐな会話を繰り返しながらお互いの過去や考えを知っていって……。

「花曇りの向こう」

中学校の国語の教科書にも掲載された物語。

小学校卒業と同時に引っ越した中学一年生の明生は、中学生活が始まって三週間が経っても、まだ一人も友達ができずにいた。仲間に馴染むときっかけを探るもハードルは高くなるばかりでうまくいかない……。

瀬尾まいこさんの他のおすすめ作品

頼りない顧問のもとで、寄せ集めのメンバー6人が、中学最後となる駅伝の県大会出場を目指す物語。中学入試の国語でよく出題される一冊。

2019年本屋大賞受賞、2021年には映画化もされた瀬尾まいこさんの代表作です。

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