映画「凪待ち」香取慎吾主演、エンドロールに込められたメッセージ

映画「凪待ち」香取慎吾主演、エンドロールに込められたメッセージ

作品紹介

宮城県石巻市を舞台に、人生につまずき零落れてしまった男の「喪失」と「再生」を描く。白石和彌監督、香取慎吾主演。

キャスト・スタッフ

【監督】白石和彌
【脚本】加藤正人
【出演者】香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー 他
【制作年】2019年

あらすじ

毎日をふらふらと無為に過ごしていた木野本郁男(香取慎吾)は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓(西田尚美)の故郷・石巻に戻る決心をした。そこには、末期がんであるにも関わらず、石巻で漁師を続ける亜弓の父・勝美(吉澤健)がいた。亜弓の娘・美波(恒松祐里)は、母の発案で引っ越しを余儀なくされ不服を抱いている。
美波を助手席に乗せ、高速道路を走る郁男に美波の声が響く。
「結婚しようって言えばいいじゃん」
半ばあきらめたように応える郁男。
「言えないよ。仕事もしないで毎日ぶらぶらしてるだけのろくでなしだし…」
実家では、近隣に住む小野寺(リリー・フランキー)が勝美の世話を焼いていた。人なつっこい小野寺は、郁男を飲み屋へ連れていく。そこで、ひどく酒に酔った村上(音尾琢真)という中学教師と出会う。村上は、亜弓の元夫で、美波の父だった。
新しい暮らしが始まり、亜弓は美容院を開業し、郁男は印刷会社で働きだす。そんな折、郁男は、会社の同僚らの誘いで競輪のアドバイスをすることに。賭けてはいないもののノミ屋でのレースに興奮する郁男。
ある日、美波は亜弓と衝突し家を飛び出す。その夜、戻らない美波を心配しパニックになる亜弓。落ち着かせようとする郁男を亜弓は激しく非難するのだった。
「自分の子供じゃないから、そんな暢気なことが言えるのよ!」
激しく捲くし立てる亜弓を車から降ろし、ひとりで探すよう突き放す郁男。
だが、その夜遅く、亜弓は遺体となって戻ってきた。郁男と別れたあと、防波堤の工事現場で何者かに殺害されたのだった。
突然の死に、愕然とする郁男と美波――。
「籍が入ってねえがら、一緒に暮らすごどはできねえ」
年老いた勝美と美波の将来を心配する小野寺は美波に言い聞かせるのだった。
一方、自分のせいで亜弓は死んだという思いがくすぶり続ける郁男。追い打ちをかけるかのように、郁男は、社員をトラブルに巻き込んだという濡れ衣をかけられ解雇となる。
「俺がいると悪いことが舞い込んでくる」
行き場のない怒りを職場で爆発させる郁男。
恋人も、仕事もなくした郁男は、自暴自棄となっていく――。

(公式HPより)

脚本家の加藤正人さんによるノベライズ本 

見どころ・感想

香取慎吾のハマり役

主演は誰もが知っている国民的アイドルの香取慎吾さん(以前、何かの番組でご自身の職業を訊かれて、「アイドルです!」って答えられていたので)。香取さんと言えば、孫悟空、ハットリくん、こち亀の両さん、慎吾ママなど明るいキャラクターのイメージが強いと思います。しかし、随分前になりますが「一千兆円の身代金」や「沙粧妙子 – 最後の事件」の犯人役などをやられていた時から、少し影のある役が絶対似合うだろうなと勝手に思っていました。今回、ギャンブル依存症で、どんどん悪い方へ悪い方へ堕ちていってしまう郁男という役、さらに「凶悪」や「孤狼の血」の白石監督とタッグを組むということで、公開前からとても楽しみにしていました。郁男は、だめな男ではあるけれど悪人ではない。どこか子供のような幼さと優しさがある人物を香取さんが見事に演じられていました。セリフを話していないときの香取さんの表情がすごくよかったです。香取さんは、普段はくっきり二重瞼だったかと思います。しかし本作では顔がむくんで瞼も重い感じが郁男というキャラクターの雰囲気を作り上げていました。

また、加藤正人さんの脚本が素晴らしい。引っ越しの日に 業者の方を待たせてまで 郁男が美波とゲームをしているシーンがあります。セリフではなく行動で、郁男というキャラクターがよく伝わるシーンでした。

多分、またやるな

恋人が死んでも、大切な人のお金でも、発作のようにやって来る衝動。どうしてギャンブルに手を出しちゃうかなあっていうところが何度もあって、でもそれこそが依存症なんだと怖くなります。 郁男と美波、勝美の三人で街を歩きながら、郁男が泣くシーンがとても切なく、足掻いて足掻いてそれでも変われない郁男の情けない気持ちや、人の優しさすら痛くて苦しい気持ちがとても伝わってきました。最後は、それでも少し希望が持てるエンディングとなっていました。しかし、多分、郁男にまた衝動がやってくる日もあるだろうし、それとどう向き合い戦って生きていくのか、この人物のその後もとても気になりました。

エンドロールに込められた思い

ネタバレになってしまうので詳細は映画を観てください。ただ、エンドロールで流れる映像に衝撃を受けました。震災から8年たった今だからこそ、多くの人に見て欲しい映画でした。エンドロールまでしっかり見てこの映画のメッセージ、「凪待ち」というタイトルの意味が強く伝わってきました。

このセリフがいい!

津波で海がだめになったのでなく、津波で新しい海になったんだ(勝美)

正確には違うかもしれませんがこんな感じのセリフです。監督が震災について石巻の人々に取材をして、実際に漁師さんから聞いた言葉だそうです。

白石和彌監督作品

白石監督作品で、私の中でのこれまでのナンバーワンは、「彼女がその名を知らない鳥たち」だったのですが、うーん、「凪待ち」、並びました。2019年前半に観た映画の中では、ダントツで好きな作品でした。

ちなみに、作品の中で、 黒田大輔さんが演じられた男が郁男に追いかけられゲロを吐きながら逃げるシーンがあるのですが、そのゲロが本物だったという記事を見つけて驚きました。ゲロも操ることができるなんて、凄い役者さんですね。

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