映画「響」本物の天才に出逢ったとき、人は自分の進むべき道が見えるのかも

映画「響」本物の天才に出逢ったとき、人は自分の進むべき道が見えるのかも

作品紹介

原作は、「マンガ大賞2017」大賞を受賞した、柳本光晴による人気コミック「響 ~小説家になる方法~」(小学館「ビッグコミックスペリオール」連載)。圧倒的な才能を持つ女子高生作家を軸に、彼女に翻弄される周囲の人々の心の葛藤を描いたヒューマンドラマ。主人公・響を演じるのは映画初主演となる平手友梨奈(欅坂46)。そして脇を固めるのは、北川景子、小栗旬、高嶋政伸、柳楽優弥、吉田栄作といった超豪華俳優陣。監督は、「君と100回目の恋」「君の膵臓をたべたい」などドラマチックな青春映画を多く手掛ける月川翔監督。

キャスト・スタッフ

監督:月川翔
原作:柳本光晴
脚本:西田征史
出演者:平手友梨奈、北川景子、アヤカ・ウィルソン、高嶋政伸、柳楽優弥、北村有起哉、野間口徹、小松和重、板垣瑞生、吉田栄作、小栗旬 他

あらすじ

スマートフォン・SNSの普及により、活字離れは急速に進み、出版不況の文学界。そこに現れた一人の天才少女、彼女の名は『響』(平手友梨奈)。

15歳の彼女の小説は、圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。文芸誌「木蓮」編集者の花井ふみ(北川景子)との出会いを経て、響は一躍世の脚光を浴びることとなる。

しかし、響は、普通じゃない。彼女は自分の信じる生き方を絶対曲げない。世間の常識に囚われ、建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができない。響がとる行動は、過去の栄光にすがる有名作家、スクープの欲だけで動く記者、生きることに挫折した売れない小説家など、様々な人に計り知れない影響を与え、彼らの価値観をも変え始める。

一方、響の執筆した処女作は、日本を代表する文学賞、直木賞・芥川賞のダブルノミネートという歴史的快挙にまで発展していく。(公式HPより)

原作 「響 ~小説家になる方法~」柳本光晴

原作は、「マンガ大賞2017」大賞を受賞した、柳本光晴による人気コミック「響 ~小説家になる方法~」(小学館「ビッグコミックスペリオール」連載中)。

感想・みどころ

原作者もイチオシのはまり役、鮎喰響を演じた平手友梨奈

原作者の柳本さんが「サイレントマジョリティー」のPVを見たときから、響を実写化するなら、主演の響役は平手友理奈さんしかいないとコメントされていますが、まさにイメージがぴったりだと思いました。ライブなどでファンの方には別の一面も見せているのかもしれませんが、私の場合、平手さんのイメージが「サイレントマジョリティー」なので、ああ、分かる!の一言です。

初主演とは思えない堂々とした演技で、もはやこの響役は平手さん以外にはあり得ないんじゃないでしょうか。最年少で欅坂46の絶対的のセンターというのも、圧倒的な才能を見せる響とリンクして重なります。一方で、時折見せる少し幼さが残る可愛らしい笑顔が、響の人間らしい一面を感じさせてくれます。

ついに解禁!主題歌は、平手友梨奈「角を曲がる」

エンディングで響の声で歌が流れてきました。映画公開前に、情報が隠されていたため、ファンの方の間では、色々な噂や憶測が飛び交っていたようですが、主題歌は、平手友理奈さんの初のソロ曲となる「角を曲がる」です。

『角を曲がる』
作詞:秋元康  作曲:ナスカ  編曲:the Third  歌:平手友梨奈

月川監督は、「情報公開をしなかった理由を映画全体が平手友梨奈のプロジェクトなんじゃないか、という余談を与えたくなかった。映画に触れた方々が主題歌に関しても本編の一部だと感じてくれたら」とコメントされています。エンディングにかかる主題歌が本編とイメージが違うと、せっかく映画の世界に浸っているのに急に現実に引き戻されてガックリします。でも、本作ではそんな心配はいらないと思います。その歌詞も、響と通じるものがあって、それこそやっぱり、圧倒的な才能「秋元康」と思いました!

二人の影の主人公、凛夏(アヤカ・ウィルソン)と山本春平(小栗旬)

主役の響を軸に話に話が進んでいきますが、影の主役は天才を目の前にした普通の人々だと思います。響は現実離れしたリアリティのないキャラクターでもあるので、響の周りの人々の方がリアリティがあり、感情移入できる部分が多いと思います。そこにこそ、それぞれの葛藤や成長という人間ドラマがあります。そのためでしょうか、どうしてもこの脇役達を応援したくなりました。

日本を代表する小説化を父に持つ凛夏(アヤカ・ウィルソン)

響と同じ高校の文芸部部長で、父と同じ小説家を目指しています。その場の雰囲気を壊さないよう誰とでも親しくできる一方、誰にも心を開いていなかった凛夏。響と出逢い、その才能に嫉妬もします。彼女には父親の名前の重圧もずっと付きまとっていたでしょう。そして、圧倒的な才能との差を感じて書くことから逃げたいと思います。響に八つ当たりもしてしまいます。それでも、響や父親との対話の中で、凛夏は自分の作品のレベルを受け入れていきます。

自分の現実を受け入れ、響にも友人として接することができる凛夏はとても強い人だと思いました。そして、次の作品こそは、響に「面白い」と言わせてみろよと、応援したくなるキャラクターでした。

このセリフが好き!

「どちらかって聞かれたら、面白い本の棚にいれるよ」(祖父江秋人)

凛夏の本棚は、面白かった本とつまらなかった本に分けられています。響には酷評されてしまった凛夏の小説。父・祖父江秋人は、作家として正当な評価を伝えた上で、娘を励ますようなこの言葉を掛けます。誰よりも父親に認められたかったであろう凛夏に未来をくれる言葉だと思いました。

芥川賞にノミネートされるが受賞できない山本春平(小栗旬)

響と対照的に描かれている山本春平。芥川賞に何度もノミネートされているので、凡人というのとも違うと思いますが、何年も努力をして小説を書き続け、そして、小説の事ばかりを考えて暮らしています。響との関わりは終盤までありません。響のストーリーがドラマチックに展開していくのと対照的に、山本のストーリーは、焦燥感が漂い静かに進行しています。というよりも小説を書くこと以外、時が止まっているかのようです。髪もぼさぼさで無精ひげ、顔色もよくない。言葉もシーンも少ないですが、小説に人生をかける山本を小栗さんがとても印象的に演じています。

響と山本、二人の物語が交わるのは芥川賞発表の日。山本は、もう最後のチャンスと臨むが受賞は叶わない。受賞したのは響の「お伽の庭」。その賞をどんなに欲しいと願い、努力をしても手が届かない山本と、まったく無関心なのにいとも簡単に飛び越えて行ってしまう天才、響。残酷な現実です。努力は報われるなんて成功者の言葉だって嘆きたくなります。

このセリフが好き!

「人が面白いと思った小説に、作者の分際で何ケチつけてんのよ」(響)

山本の自殺を止めようとした響のセリフです。響は、小説を書くのは誰のためでも自分のためでもない、もちろん賞のためでもないと言っていますが、誰かが面白いと思うならそれがすべて。小説に限らずものづくりに対するメッセージが込められているようで、凄く好きなセリフです。

さて、原作では、その後、山本は別の作品で芥川賞を受賞することになるようです。よかった!

正しければ暴力を振るってもいいのか

映画で暴力が表現されることは悪いとは思いません。ただ、今回、ちょっとうーんと思うところがありました。確かに響は、正しいことを言っているし、友人を傷つけられたことに腹を立てるのも分かります。彼女なりの「正義」が存在していると思います。そして、相手にも非があり、彼らも人を傷つけるような暴言を吐いています。言葉も暴力ですしね。

しかし、田中康平(柳楽優弥)への暴力は、おかしい。響という曲げないキャラクターは、その場でその場で相手に対面して、暴力や言葉でねじ伏せています。それならば、田中が控室で暴言を吐いたそのときに、ぶっ飛ばせばいい(よくはないですが…)。響のキャラであれば、ふみが止めに入ろうが関係ないはずです。しかしこの時ばかりは、授賞式の場で、田中がスピーチを始めたその瞬間を狙って、しかも後ろからパイプ椅子で殴ります。この田中、自意識過剰な嫌なヤツ。その発言が火を点けたというのも分かりますが、倒れて無抵抗になった相手をパイプ椅子でさらに殴り続けるのは……。そこにあるのは、ただの限度を超えた仕返しにしか見えません。響というキャラクターのヤバさを印象付けるためのシーンなのかもしれませんが、うーん。ここまで、一方的な暴力を振う人に正論を言われても……とこのシーンは感動が少々薄れました。

全体としては、メッセージ性のあるとても面白い作品でした。そして、北川景子さんて本当に綺麗だなあ。