辻村深月を読む-この順番で読めばより楽しめる、おすすめ10作品

辻村深月を読む-この順番で読めばより楽しめる、おすすめ10作品

辻村深月を読む

もう何年も前になりますが、辻村深月の「冷たい校舎の時が止まる」が面白いとうい評判を聞き、本屋さんへ行きました。小さな本屋さんではありましたが、辻村深月作品が集められた棚があって、可愛い手作りのポップが貼られていました。明らかに店員さんの手書きと思われる可愛いけど力強い文字で、『この順番で読まないと後悔します!』と、そのポップには、読むべき順番が記されていました。そして、「まずは『凍りのくじら』から読め!」とその脅迫めいたメッセージを前に、本来の目的だった『冷たい校舎の時が止まる』を買うべきか、『凍りのくじら』を買うべきか、バカみたいに悩みました。(結局両方読むわけです)

結局は、そのポップの脅迫に負けて(手書き文字の圧力に負けて)、『凍りのくじら』を手にレジへと向かいました。今は、講談社文庫の帯に、「この順番で読めば、辻村深月ワールドがより楽しめる」という図がついています。新作がでると順番が変わったりしているようですね。

辻村深月のプロフィール
1980(昭和55)年生まれ。千葉大学教育学部卒業。小学校の時に綾辻行人の『十角館の殺人』を読んで大ファンとなる。辻村の「辻」も綾辻から取られた。また、『ドラえもん』や『パーマン』など藤子・F・不二雄作品のファンでもあり、『凍りのくじら』では各章にドラえもんの道具の名前を付けている。2004(平成16)年に『冷たい校舎の時は止まる』でメフィスト賞を受賞してデビュー。『ツナグ』で吉川英治文学新人賞を、『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。そして、2018年に『かがみの孤城』で第15回本屋大賞受賞。

おすすめ作品と読む順番

あくまで、おせっかいな「おすすめの順番」です。結論から言うと、自分が興味を持った作品から読み始めることが、より辻村ワールドにハマるきっかけになるので、どこから読んでもいいんです。

では、シリーズ物でもないのに、なぜ、読む順番がおすすめしたいかというと、それが辻村作品の面白い所でもありますが、全く別の作品のようで、作品同士がリンクしているのです。「あ、あの作品に出てきたあの人か!」と発見する面白さがあるのです。それは、ひとつの物語の続きを見るような、あるいは、物語の始まる前をちらっと覗くような感覚で、今や「この順番で読まないと後悔します!」とポップに書いた書店員さんの気持ちに大きく頷けます。前に読んだ作品を取り出して読み返してしまうことも多々あります。

1.かがみの孤城

学校での居場所をなくし、閉じこもっていたこころの目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこにはちょうどこころと似た境遇の7人が集められていたーー。
なぜこの7人が、なぜこの場所に。すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。一気読み必至の著者最高傑作。

Toko point第15回本屋大賞を受賞した本作。辻村作品の中でイチオシと言っていいくらい大好きな作品です。辻村深月ワールド全開で、後半に謎と伏線が回収されていく気持ちよさがたまりません。また、最新作(2018年時点)ですし読みやすいので、最初の一冊に最適だと思います。

2.凍りのくじら

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。高校生の理帆子は、夏の図書館で「写真を撮らせてほしい」と言う一人の青年に出会う。戸惑いつつも、他とは違う内面を見せていく理帆子。そして同じ頃に始まった不思議な警告。皆が愛する素敵な“道具”が私たちを照らすときー。(講談社文庫)

本屋のポップの指示通りに、私が一番最初に読んだ作品です。初めに読むのは間違いないです。各賞の名前がドラえもんの道具の名前になっていて、どう話が展開するのだろうと不思議な世界に惹き込まれていきます。そして、最後に全てがつながったときに、第10章の「四次元ポケット」というタイトルに合点がいきます。

第1章 どこでもドア
第2章 カワイソメダル
第3章 もしもボックス
第4章 いやなことヒューズ
第5章 先取約束機
第6章 ムードもりあげ楽団
第7章 ツーカー錠
第8章 タイムカプセル
第9章 どくさいスイッチ
第10章 四次元ポケット

3.スロウハイツの神様

人気作家チヨダ・コーキの小説で人が死んだーあの事件から十年。アパート「スロウハイツ」ではオーナーである脚本家の赤羽環とコーキ、そして友人たちが共同生活を送っていた。夢を語り、物語を作る。好きなことに没頭し、刺激し合っていた6人。空室だった201号室に、新たな住人がやってくるまでは(講談社文庫)

辻村作品の中で好きな作品ベスト3に入る絶対に読んで欲しい作品です。深まる謎や張り巡らされた伏線を、下巻で回収していきます。そして最後は、なんだ物凄くいい話じゃないかーと、泣けます。

合わせて読みたい 「V.T.R」

スロウハイツの神様に出て来る人気作家チヨダ・コーキの小説です。

4.冷たい校舎の時は止まる

雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろう――。第31回メフィスト賞受賞作。(講談社文庫)

メフィスト賞を受賞したデビュー作です。高校の頃から描き始め大学生の間に書き上げたというからすごいですね。ミステリーではあるのですが、登場人物一人ひとりの苦悩や不安が丁寧に描かれています。一方で「長い」という感想もよく聞くので、初めて読むには向かないかもしれないということもありで4番目です。ただ、本作を読まずして辻村ワールドは語れないので、絶対に読むべき作品です。

5.子どもたちは夜と遊ぶ

始まりは、海外留学をかけた論文コンクール。幻の学生、『i』の登場だった。大学受験間近の高校3年生が行方不明になった。家出か事件か。世間が騒ぐ中、木村浅葱だけはその真相を知っていた。「『i』はとてもうまくやった。さあ、次は、俺の番――」。姿の見えない『i』に会うために、ゲームを始める浅葱。孤独の闇に支配された子どもたちが招く事件は、さらなる悲劇を呼んでいく。(講談社文庫)

怖かった。そして辛い、悲しい。辻村さんは、登場人物の陰の部分の心理描写が巧みであるがゆえに、本作は心をえぐられるような気持ちになります。出版された順番でいうと、本作の方が「凍りのくじら」より先に書かたことになります。「凍りのくじら」は、家族の愛が描かれているのと反対に、本作では、孤独な愛されなかった子どもが描かれます。

6.僕のメジャースプーン

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもっとずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャンスは本当に1度だけ。これはぼくの闘いだ。(講談社文庫)

TOKO「子どもたちは夜と遊ぶ」のスピンオフと言ってもいい位置づけの作品です。「子どもたち~」に出てくる少し不思議な能力を持つ秋先生が登場します。本作「僕のメジャースプーン」の方を先に読んだ方がいいという意見もあるようなのですが、後から謎が明かされる方が面白いかなと思うので、私は、この順番ですね。

7.名前探しの放課後

依田いつかが最初に感じた違和感は撤去されたはずの看板だった。「俺、もしかして過去に戻された?」動揺する中で浮かぶ1つの記憶。いつかは高校のクラスメートの坂崎あすなに相談を持ちかける。「今から俺たちの同級生が自殺する。でもそれが誰なのか思い出せないんだ」2人はその「誰か」を探し始める。 (講談社文庫)

自殺した同級生が誰なのか探すという、少し不思議なミステリーです。一方で、爽やかな気持ちになれる青春ストーリーでもあります。そして、本作は、「僕のメジャースプーン」が最後に最大の謎を解く鍵になります。そのため、「僕のメジャースプーン」→「名前探しの放課後」の順番で読むことをおすすめします。タイムスリップの謎にも「そういうことだったのか!」と大きく頷けるはずです。

8.オーダーメイド殺人クラブ

クラスで上位の「リア充」女子グループに属する中学二年生の小林アン。死や猟奇的なものに惹かれる心を隠し、些細なことで激変する友達との関係に悩んでいる。家や教室に苛立ちと絶望を感じるアンは、冴えない「昆虫系」だが自分と似た美意識を感じる同級生の男子・徳川に、自分自身の殺害を依頼する。二人が「作る」事件の結末は――。少年少女の痛切な心理を直木賞作家が丹念に描く、青春小説。

中学生という多感な思春期である登場人物達。その繊細に揺れ動く感情が、見事に描かれています。ここまで極端ではなかったかもしれないけど、そんな時期を誰しも過ごしたことがあるのではないでしょうか。先が読めない展開にハラハラしますが、とにかく最後まで読んでよかったと思える作品です。未来に希望を持てるラストになっています。

9.鍵のない夢を見る(直木賞受賞作品)

望むことは、罪ですか? 誰もが顔見知りの小さな町で盗みを繰り返す友達のお母さん、結婚をせっつく田舎体質にうんざりしている女の周囲で続くボヤ、出会い系サイトで知り合ったDV男との逃避行──。普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる五篇。現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めてもがく様を、時に突き放し、時にそっと寄り添い描き出す。著者の巧みな筆が光る傑作。第147回直木賞受賞作!

地方都市に住む人たちがちょっと道を踏み外す瞬間をとらえた短篇集です。切なくてやるせない気持ちになる5つのエピソード。WOWOWでドラマ化もされたので、ドラマの方を観た方もいるかもしれません。倉科カナさん、成海璃子さん、木村多江さん、高梨臨さん、そして広末涼子さんが、それぞれのストーリーのヒロインを演じています。

動画配信

動画配信サイトで観ることもできます。
Amazon Prime Video / U-NEXT / Hulu

※本作品の配信情報は2018年10月22日時点のものです。配信が終了している、または見放題が終了している可能性がございますので、現在の配信状況については各ホームページもしくはアプリをご確認ください。

10.ゼロ・ハチ・ゼロ・ナナ

地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。著者の新たな代表作。2013年おすすめ文庫王国 エンターテインメント部門 第1位。(講談社文庫)

タイトルがすごくいいです。その数字の意味が分かったとき、事件の真相がひも解かれていきます。そして、最後は、暖かい気持ちになり救われます。

辻村作品は、長編でも読み始めると止まらなくて、いっきに読んでしまいます。ただ、かなり分厚い上下巻になっていたり本当に長い物も多いので、読書に慣れていない方は、ここには紹介できなかった「ツナグ」や「家族シアター」などの短編集から読んでみるというのもおすすめです。